

なぜ“安い冷凍食品”は飽きるのか

「売れる冷凍食品をつくりたいんです」
「うちもPBで冷凍を出しました」
「原価が限られていて、やっぱり100円台に抑えたい」
──よく聞くが、結果はこうだ。
・一度は売れた
・だが二度目がない
・クレームは来ないが、ファンもつかない
・“使い捨て食品”として消えていく
これは味の問題ではない。ブランディングでもない。
「構造がない冷凍食品」は、人間の身体と感覚に“飽き”を起こさせるのだ。
“安い冷凍食品”の構造的欠陥とは?
| 項目 | 問題 |
| 凍結設計 | 汎用ラインで“なんとなく”冷凍 → 食感・香り・色が崩れる |
| 味の設計 | 強めの塩味・糖・油で誤魔化す → 飽きやすく、“疲れる味”になる |
| 商品構成 | 原価の都合で、食材・部位・加工がパターン化 → 身体が学習して飽きる |
| 利用シーン | 弁当・夜食・非常食としての“受け身の選択” → 情動が動かない |
→ どこにも“繰り返し選ぶ理由”が存在しない構造になっている。
人は、“構造”がないものに飽きる
身体は非常に正直だ。
同じ油脂、同じ食感、同じ凍結方法で作られた食品は、
2〜3回で「もう十分」と判断される。
それは「まずいから」ではない。
むしろ、「一定の快を超えると、刺激が反転する」──
つまり、“反復刺激疲労”が起きる構造になっている。
“飽きない冷凍食品”にある3つの構造的要素
味に揺らぎがある
→ 微細な繊維感・香りの変化・油脂の質で“読む味”になる
再加熱後の表情が変わる
→ 電子レンジやオーブンで“戻り方”が変化し、食べる側が“発見”できる
使い方に余白がある
→ 単体完結ではなく、アレンジ可能な中間素材のような構造(例:出汁付きの冷凍豆腐など)
これらは、食材単体の工夫ではなく、“冷凍設計全体”の再構築によって初めて生まれる。

飽きる理由は、「価格」ではなく「構造の平板化」
100円でも飽きない食品は存在する。
一方、500円でも2回目がない食品もある。
この差は、「味の濃さ」でも「広告量」でもない。
「構造の奥行き」がない冷凍食品は、身体がすぐに学習してしまう。
だからこそ、設計思想を持った冷凍食品は、“安くても繰り返し選ばれる”。
結語:冷凍食品が“飽きるかどうか”は、思想の深さで決まる
安くておいしいものは、巷にあふれている
だが「また買おう」「誰かに勧めよう」と思わせるものは、極めて少ない
飽きられない冷凍食品には、「沈んだ構造」がある。
食べたとき、舌ではなく、なぜか“記憶”に残る。
それは、設計された凍結プロセスと再加熱後の“構造の美”があるからだ。
次回は、「冷凍庫の中の未来──食のOSを変える技術」と題し、
冷凍が“消費手段”から“未来の保存OS”になる転換点を語る。

