

1秒が味を決める――急速凍結という設計思想

固定したレシピ、同じ食材、同じ味付け。
そのすべてが同じでも、「凍らせ方」が違うと、味は明確に変わります。
その違いを生むのが、急速凍結です。
一般的なフリージングは、-18℃の凍結帯でゆっくり凍らせます。
これに対して急速凍結は、-30℃以上、場合によっては-40℃以下の環境で、「数分で根本凍結」させる技術です。
この「速さ」によって、食材の中の水分がどのように凍結するかが変わり、結晶の大きさ、食感、しみだれ、臭いに致るまでの「凍らせ様」が別物になります。

たとえば、一般の凍結では食材内部に大きな水結晶が実用され、細胞を破壊します。
これにより解凍後に水分が上漏し、「すかさら」になる。
一方、急速凍結は、小さな結晶で細胞構造を守るため、微粒のような味の差をも生みます。
「凍らせ方」が食品の味を決める。
その発想は、すなわち「製造は設計である」という思想の実装にほかならない。
急速凍結は技術でもあり、思想でもある。
食品を「凍らせる」ことは、その製品を「読み解き」、「構造化する」ことに等しい。
食材の形、水分の分布、味の抑揺と分散を、
この「凍らせ方」の設計によって持続させること。
それこそ、製造業が、製造である所以を明らかにするのです。

